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不動産取引論1 仲介とは何か 

2015/08/07コラム

不動産取引論 戦術編1 仲介とは何か

不動産取引論 戦術編 仲介とは何か
  日本では不動産取引に仲介業者を間に入れることがほとんどである。売主と買主の双方が別々の業者を使うこともあれば、両方の依頼を同じ業者が受けることもある。双方が別の業者を立て、さらにその間に別の業者が、しかも複数入ることもある。リレー式に複数の業者が取引相手にたどり着くまで発生するのは、まさに不動産市場における情報の不足またはそれを皆が隠そうとすることに起因する。この点はまず置くとして、1業者が取引当事者両方から手数料を取ることは双方代理との関係で問題とされてきた。もし仲介行為が代理であるとするならば、民法108条「何人と雖も同一の法律行為に付き其相手方の代理人と為り又は当事者双方の代理人と為ることを得ず。但債務の履行に付ては此限に在らず。」から見て双方代理ではないかと。
宅地建物取引業法は媒介という用語でもって慣行として成立してきた業に保護を与えている。売主は少しでも高く売りたいのであり、買い主は少しでも安く買いたいのであるが、その両者が同じ業者に相手を探し価格を交渉させることが双方代理でなくて何だと言うのであろうか。仲介という語もあるが、まったくの業界用語のようで、法律上は出てこない。どうも不動産会社の業務の呼称で、この方が一般的である。
媒介とは、業者が売買・交換、貸借を成立させるにあたって、契約当事者の両方を紹介すること、とある不動産用語辞典には書いてあるが、明確な定義はないとも認めている。触媒が化学反応を促進するように、不動産取引の成立を促進する行為というわけである。考察するに、売り主と買い主が直接出合うことは近くに住んでいる場合以外稀である。まず相手を探すため業者の情報を活用する、これは媒介行為の本質の重要な一部であるが全てではない。潜在的な取引相手が見つかったとして(業者が売り買い希望情報をつき合わせたり、見込み客に情報を持ち込む)、後は直接ご交渉下さいでは業者は商売にならない。双方の売り希望値と買い希望値を一致させて取引をまとめねばならない。また不動産が持つ諸性質に由来するさまざまな問題を当事者の間に入って解決せねばならない。契約の細かい条件を取りまとめ、場合によっては履行を促したり、後で判明した事実があれば契約条件の変更も交渉せねばならない。契約書の作成等、事務の代行も通常含まれる。これが売り主、買い主それぞれが別の業者を使うなら良い。聞けば弁護士を双方が立てる国もあるという。その方が合理的である。なぜ、日本では上のような特に価格交渉まで双方が同じ者に任せるのか。
おそらくは「仲人口(なこうどぐち)」を日本社会が認めてきたから成立した業であろうと考える。当人どうしが交渉すればまとまる話もまとまらない。そんな高い値では今の相場では売れないと売り主には言い、買い主には今の相場ではもっと出さないと買えないという。嘘か誠か別の買い客もいるとまで言う(こともある)。これを同じ人間が双方に言うのは騙すことになるのか、取引をまとめる為には必要な方便なのか、取りあえず宅建業法が認めて民法での禁止を解除しているのだということである。
日本の社会は法律を持ち出して物事を決めるやり方では長い間なかった。世間常識というあいまいながら強固な束縛の中で、より世間で認められた者、強者、あるいはその事柄についてはよく物を知った者に当事者の間に入ってもらって解決してきた。婚姻であれば仲人がおり、雇用では口入れ屋、もめ事でもあれば大家だの有力者だのである。そう、不動産屋もあったのだろうか。近代化の中で法律制度を導入しても権利と義務を自己責任で主張することはなじまなかったわけである。

 

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