高丸城(新宮市三輪崎)
2015/08/07不断斎見聞記
高丸城(新宮市)
高丸城(新宮市)-なんてお城あったかね
新宮市南西部の三輪崎地区、ただいま那智勝浦道路の南端でさらに伸ばす工事が進んでいる。そのバイパスから北側の見晴らしのよい山上に、石垣と祠が建っている。その石垣には黒石を磨いた板が埋め込まれおり、高丸城趾として、少しばかり解説が書いてある。
「嵯峨天皇の弘仁年間に熊野山党が此の地に高丸城を築き、榎木、宇井、鈴木三党の連合軍と戦い敗れる。南蛮の乱という。」
こちらはその下の小規模な分譲住宅地を見に来たのであるが、急傾斜の道を上がり老人ホームも越え、廃屋も過ぎてたどり着くこの団地に、はたして市場性はあるのかと帰ってからの作業に、ちょっと不安を覚えていた
。よくぞ造成したよな。
たしかに周知の埋蔵文化財包蔵地である。団地ははずれていそうだ。役場でついでにそんな城あったかいと聞けば、某寺の別院であるそうだ。
必要な現場作業を済ませ石垣上でたたずむ。ふーん、負けちゃったんだ。その後修験道の業場となり大師山とも呼ばれた、か。どこの地も歴史はある。城だってあるだろう。
「和歌山県の歴史」とか入門書にのってるようなお城ではないらしい。帰ってサイトを探れば、「熊野年代記」に
「延暦二三(804)甲申四月、田村麿将軍熊野に入り鬼を伏す」「弘仁元(810)庚寅三月、宇井榎本鈴木(熊野三党)熊野悪鬼多討」の記事を引用したのがあった。
ということは、高丸城を攻め落とした熊野三党というのは、坂上田村麿にやられた方で鬼扱いされている。その鬼党に攻められた山党というのはどういう者だったのか、とか、経過はどうで、どのくらいの兵力でとか、まるでないというから、どうも始末に負えない。人が命を賭けて戦ったなら記録は残すべきだというのが、私の考えである。
この弘仁という時代は、弘法大師が嵯峨天皇から高野の地を賜ったのが弘仁7年(816)、熊野別当初代快慶が補任されたのが弘仁3年(816)と、当地には縁のある事件のあった時代である。その傍ら、東北同様、征夷大将軍が派遣される僻遠の地であったわけで、熊野の不思議さを感じる。諸説あるんだろうが、あるサイトには唐から亡命してきた将兵によるのが南蛮の乱で、その三党の軍師楠富彦というのが楠木正成の遠祖だという。
やれやれ、熊野年代記を読めというわけか。
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