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不動産取引の特徴

2015/08/07コラム

不動産取引の特徴

他の商品と異なり、土地や建物といった不動産には、いくつかの特徴がある。まさに動かないし、増えたり減ったりしない、それぞれが別個で個別性が強く 代わりがきかない。あるいは土地ならいろいろな用途に使うことができ、隣の土地と併せることも半分に区切って売ることもできる。注1)

とはいえ取引するとなるともっと特徴を並べ立てることができるだろう。
1.まず法律上はともかく通常登記申請書類が完璧に引き渡されるのと交換で  代金が支払われる。
2.やたらと法律で規制を受けており価格に影響を与える要素が多くかつ複雑  である。
3.対象不動産自体が詳細に調べるのに手間、費用、知識、技術が必要なこと  が多い。
4.株式のような市場がないため、取引相手を探すためには、時間と費用がかかる。その費用は仲介業者への手数料であることがたいていであり、まれに自分で競争入札を組織したり、自分で売り込むこともあるが、その時間、事務費用、活動費用が該当する。
5.取引費用がかかる。測量費、登記申請費用、広義の費用として各種の税金  が課せられる。売り主も買い主も通常何らかの取引コストの発生は避けられない。
6.保有しているだけでも費用が発生する。固定資産税・都市計画税等の保有  税もこれに含まれる。建物なら修繕費、維持管理費が発生し、土地でも擁壁、配管等で費用が発生することがあるし、農地では水利組合、土地改良等で賦課金が課せられるものも多い。
7.目的の用途に利用するためには、さらに多くの手続と費用が必要なことが多い。宅地開発などでは買ってからのプロセスの可否、時間・費用を見込んで買う意思を決定するが、普通の住宅でさえ多少手を加えたり、近隣対策も必要なことがある。収益目的で利用するためには商品化のための企画、費用、時間が必要となる。

これほど扱いにくい(管理の困難性)性質があるため、通常は預金、債権よりは高利回りである。いくら値下がりしてもなくなってしまわない土地よりは、残材価格、いや現実的にはマイナスの取毀費用まで価値が失われる宿命の建物の方が高利回りである。 こうして見れば不動産の取引は一連の流れの中で無数の過程を含むものである。 たいてい必要なことのすべてが完了してやっと正常に終了する。その後に新しい隠されていた事実が判明したり、物的法的欠陥が見つかると瑕疵担保責任を追求 される可能性が高い。 所有者が取得の目的を果たせない場合に責任が自己の目算 違いなのか他人に責任追及できるかの境界は完全には明らかではない。 相手は売り主だけでなく、仲介業者や、取引付随のサービスを提供した、不動産鑑定士、測量士等にまで可能性は及び、これら業者もまた高度な善良なる管理 者たる注意義務が課せられている。

取引-その本質

かくまでややこしい、電話一本か今ならパソコン上の操作で取引完了となる株式とはまるで異なる不動産の取引とは、ただの売り買い、貸す借りる、なのであろうか。より特徴を整理すれば次の通りである。

1.売り手、買い手に対して情報が不完全にしか与えられない。
2.総じて高額で容易に売買できないのが普通である。
3.取引の中で合意を要する項目が多く、交渉は多岐で一定期間かかる。瞬時に合意し取引完了とはならない。
4.取引当事者の意思が取引の態様や方法に影響を与えることが多く、対象の不  動産のみならず相手方の人格・属性・置かれた事情等で影響される。
5.取引方法に一応の慣行はあるが、合意により変更される部分は大きい。
6.価格は原則自由に決められ、類似した他人の取引内容は通常知ることが困難  である。
さらに社会的・経済的観点からも不動産には一般の財とは異なる特性がある。
1.公共性が高い。だから金儲けの対象にしてはならないという意見も強いが、もう  少し冷静に見れば、そういう部分も大きいがそれだけではない。
道路はなぜ通行無料かというと、有料道路はゲートを作ったり徴収人の費用が  かかる。高速道路はできるがその辺の道は勘定に合わないから税金で作ってみ  んな無料で使うだけである。人間生まれてから死ぬまで、24時間体の一部は不動 産と接触して生きている。
死んでからも永遠にである。こんな状態で市場での勝者に所有の集中が進むと  社会不安が高まるので、相続税やらで集中を抑えている。
2.地球の表面を観念上の線で区切って一個(筆)の土地として、それに対する権利  を保有、取引するわけであるから、対社会的な信用とか地位を象徴する性格があ  る。したがって買う者、保有する者の動機は投資効果だけではない。自負心や名  誉心、虚栄心、周囲への気兼ね、集団への帰属意欲等が混入してくる。
3.特に住宅地の場合は社会的、文化的側面が強く、地域性も強い。子供が学齢期  の家族の場合転校を避けたり、老人が高額の買収価格を提示されても帰属する  地縁集団から離れたくないため拒否するような面を考慮せねばならない。

かくして今まで述べたような特性を理解すれば、不動産の取引とは、売買の対象  の土地よりもむしろ取引相手をよく研究し、心理的交渉を重視せねばならない。土  地等を詳しく調べ行政からの規制内容や近隣環境を知ることは当然必要であり、  知らない部分が多い方が相手よりも不利となる。
当然外部の経済環境、地価の動向 もよく知ったうえで臨む必要がある。
彼我の置かれた状況、価値観を知り、自らの取引動機を達成する。そのために   仲介業者を使うならば、その仲介業者についても知らなければならない。

注1)「不動産鑑定評価基準」では不動産の特徴を次のように規定している。
不動産が国民の生活と活動に組み込まれどのように貢献しているかは具体的  な価格として現れるものであるが、土地は他の一般の諸材と異なり次のような特  性を持っている。
(1)自然的特性として、地理的位置の固定性、不動性(非移動性)、永続性(不  変性)、不増性、個別性(非同質性、非代替性)等を有し、固定的であって硬直的  である。
(2)人文的特性として、用途の多様性(用途の競合、転換及び併存の可能性)   、併合及び分割の可能性、社会的及び経済的位置の可変性等を有し、可変的  であって伸縮的である。

 

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